「静かに、高く登れ」
時には体制に抵抗し、現実を否定し、いつでも夢を持って志を高きに置くことができるのは、青少年の特権であり、すばらしいことである。
しかし、往々にして大きなトラブルのもとになるのも、これである。若い心は、とかく到達のための手段をおろそかにし、目的に短絡して、登り着くためには他人を犠牲にし、慣習を無視しがちである。
ゲリラ、テロ、ゲバ、ジャック等、結果的にはその目的を果たし得ず世の顰蹙を買ったことは、衆知のこと。日本は自由競争社会とはいえ法治国家であり、すぐれた伝統を持つ民族集団である。われわれの志も、手段も、その法や伝統の中に求められるべきで、まずその中で精一杯努力すべきであろう。
進学、就職、昇進、結婚等個人的な志も含めて、その達成のためにはまわりの賛同や協力を得て、他との調和も保ちながら…、つまり「静かに」しかも「高く」登ってもらいたいと、私は若い人たちに願っている。
昭和53年 育英出版社発行
「現代廣島の百人(下)」への寄稿より |